暗い中に朱の彫り、牛鬼のような墨の絵、陽はあたらない。裸足で木の床を歩く、重く響く音。始めと終わり以外、ほとんど音楽が聞こえた記憶がない、音が空気を造っている。そこに半四郎の深い声。
三人に子供が生まれ、束の間の温かな幸せな日、孫を抱く半四郎の喜び、それを見て微笑む二人、こちらも嬉しくなりにやけた顔に。本当に温かく、自分の家でもニコニコしていられたら、と心が言った。それと冒頭の目を背けたくなる痛さ、終盤の哀しさ、悔しさ、絶望の深さとの乖離の大きさが際立った。いや、見終わって心に残るのは、うきうきするょうなあの幸せな頃。境遇は自分で選ぶ余地はなかった、ただ偶々そちら側に居たばかりに…。しかし彼等はただ生き、春を待っていた。あの喜びの日々がまた来ると信じて。
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- 2011/11/11(金) 01:15:07|
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